■エクスカリバー
エクスカリバーの威力
エクスカリバーは妖精に鍛えられた魔力のこもった黄金の柄を持つ名剣である。
その刀身は30本のたいまつに等しい光を放ち、切り裂けぬものは無く、刃こぼれをしない刃を持っているといわれる。
この剣を用いてアーサー王は500人もの敵を一人で打ち倒したこともある。
またこの剣の鞘にも魔力がかかっており、この鞘を持つものはいかなる傷も負わない。
「剣と鞘と。どちらが大切か?」
この問いはアーサー王を見守る魔術師マーリンがアーサー王にたずねた有名な質問である。
アーサーは剣と答えたが、マーリンはそれを愚かだと諭した。
「この鞘は剣よりも何倍も価値がある」
この受け答えにはある教訓が入っている。すなわち、王は国を侵略する為ではなく、国を守る為に戦うべきとマーリンは王を諭したのだ。
抜いたのか、与えられたのか
強大な力をもつ
エクスカリバー。この剣がアーサーの手にどうやって渡ったのか知っているだろうか?
もっとも有名なのは、『泉の精霊から授かった』説と『突き刺さっていた剣を抜いた』説である。
これらの説で最初に生まれたのは『抜いた』ほうである。
『この剣を抜いた者は真のブリテンの王者である』
こう刻まれた鉄床(岩、地面等)に突き刺さった状態でこの剣は物語に登場する。アーサーは他の何者にも抜くことのできなったこの剣をいとも簡単に引き抜く。
こうして彼はイギリスの王者となった。
またこの話は初期のころに作られており、アーサー王の物語でもっとも最初に書かれたものには
エクスカリバーはカリブヌス(カリバーン:ラテン語で鋼鉄の意)として登場している。
もうひとつの説『泉の精霊から与えられた』というのは後期に作られたものでこれは『妖精から与えられた』というエピソードを加える為だった。
この説の中でも
岩に突き刺さった剣は出てくるがそれは
エクスカリバーとは別物である。
いま良く知られている
エクスカリバーはそのほとんどが両刃の、
ロングソードのような形状のものである。
しかし、実は
エクスカリバーは片刃だった可能性があるのだ。
アーサー王が実在したといわれる中世以前、暗黒時代の刀剣には
サクスといわれる短剣が存在した。
この短剣は北欧で用いられた片刃の
ナイフで非常に扱いやすく、
スクラマサクスと呼ばれる大型の刀剣タイプも作られた。
この
スクラマサクスも当然片刃で、アーサー王の
エクスカリバーもこの刀剣だった可能性もあるのだ。
その証拠にアーサー王の物語の古いものには片刃の刀剣を持ったアーサーや円卓の騎士達を見ることができる。
また、上記の理由で円卓の騎士達の剣も片刃だった可能性があるといえる。
管理人としては片刃の刀剣の方が好きであるから、この説の存在は単純にうれしい。
■円卓の騎士達の剣
円卓の騎士で有名なランスロット卿のもつ名剣
アロンダイト。
この剣は優れた剣とされたが、持ち主に恵まれなかったというしかない。
首をかしげる方もいられるだろうが実はこの剣、活躍する場面がほとんど無いのである。
ランスロット卿はアーサー王の妻、グィネヴィアと不倫をしていた。これにより騎士団は別れ、アーサー王の時代が終わってしまったのだ。
さらにはランスロット卿は、宮廷から王妃を連れて逃げる際に
アロンダイトをつかい、親友であり、同じ円卓の騎士であるガウェイン卿の弟達を切り殺している。
アーサー王物語で古くから登場する古株の一人、ガウェイン卿のもつ剣。
この剣
ガラティンの確かな効果は分かっていないが、
エクスカリバーと同じく妖精に鍛えられたこと、切れ味凄まじく、刃こぼれしない名剣といわれている。
しかしこの名剣よりもこのガウェイン卿のほうが曲者だった。
彼は不思議な力を持っており、日が昇るに連れてどんどん強くなるのだ。その力は正午で最高になり、正午のガウェイン卿にはランスロット卿も勝てなかった。
アーサー王物語で登場するもうひとつの『
岩に刺さった剣』。エクスカリバーのことではない。
ランスロット卿の息子、聖杯を探せという試練を成し遂げたガラハッド卿の剣。
もともとこの剣は泉の精霊のものであったが、この剣は呪われており、宮廷にいたベイリン卿の命を奪っていた。この剣は真の持ち主以外には死をもたらすのだ。
後にこの剣が再び登場するとき、大理石に突き刺されておりその石にはこう刻まれていた。
「この剣はもっとも優れて騎士の為のもの。そのもの以外誰もこの剣に触れるべからず」
アーサー王はランスロット卿に抜くように言ったが、ランスロット卿は不倫を恥じており、辞退。
ガウェイン卿にも抜くことができなかったこの剣をガラハッド卿は引き抜いた。
こうして本来の持ち主へと戻った剣を持ちいてガラハッド卿は聖杯を見つけ出した。